各候補者のご回答 (候補者は50音順)

 学長候補者 古在豊樹氏のご回答
 
1.法人化された千葉大学の現状認識ならびに今後の運営についての基本理念について
 
 総合大学である千葉大学は,教育と研究,基礎研究と応用研究,人文社会科学系と理工医薬学系,学部と大学院とセンター,部局間などがバランス良く発展することにより,先導的総合大学になることができると確信します.しかしながら、現状では,発展のバランスが崩れています.そこで,第一に,そのバランスを弱い者の立場と大局的視点から改善することによって,全学的に教育研究環境を改善します.そのために,運営費交付金・授業料収入の適正な配分ならびに概算要求事項に関しての幅広い検討と透明化を,ユニバーサルな理念と全学協力による戦略的立案にもとづいて行います.また,外部資金増大に学長自らが出向いて努力し,さらには,国際交流,地域貢献,産官学・地域連携の体制を,役員会が一体となって支援することにより,さらに充実します.
第二に,全学的に重要性が認識されている普遍教育への総合的・実質的支援が未だ十分でないので,拠点組織を立ち上げて,本格的支援を行います.教育プログラムの改善にあたっては,学生(院生等を含む)の要求を体系的に汲み上げるための組織を作ります.さらに,複眼的学識を備え,多面的・大局的思考が出来る学生を養成するために,部局の独立性を堅持しつつ,部局間の教育交流プログラムを立ち上げます.
 研究に関しては,基礎研究と応用研究のそれぞれの重要性を十分に認識し,研究の自律性を尊重すると共に,21世紀の社会ニーズに応えるための,学術領域横断型のプロジェクト研究を大学として支援します.また,ISO14001認定とも関連させて,環境保全をも考慮した方法での光熱水料およびゴミの節減による管理経費節減を実現し,その他の経費節減方法と合わせることによって,各教員への研究費の実質増額を実現します.
 教育,研究,社会・国際貢献に関する見識と長期的・大局的視点にもとづき,大学運営の基本方針をすみやかに提示する一方,役員会,大学経営協議会,教育研究評議会に加えて,内外の関係者の意見に素直に耳を傾け,また現場の状況を把握した上で,定められた手続きにしたがって,重要事項に適切な判断を行います.他方,決定にいたった理由の根拠について,教職員・学生に丁寧に説明します.さらに,学長・役員会に対する評価の仕組みを設けます.大学のビジョン,基本方針等をより徹底して,教職員・学生ならびに社会に公表し,意見を交換し,千葉大学の目指す使命と目標を関係者が共有し,教職員・学生・地域社会が共生するようにします.
 
2.千葉大学教職員の働く環境についての現状認識ならびに検討課題と今後の改善方向について
 
 教職員が楽しく,自発的に,使命感をもって働くことが出来るように,千葉大学ユニオンとも協調して,教職員の労働環境と労働条件を改善し,千葉大学で働くことに誇りと安心感をもてるようにします.労働環境改善項目の重要度は,広い範囲の関係者との定期的な対話等により,現場の意見を十分に尊重して決めます.生協ならびにその他の団体と協力して,学生・教職員およびキャンパスで働く人々のキャンパスライフの質を向上します.
 
3. 特記事項
 
 非常勤講師数削減:教育の質を確保するために,非常勤講師数の削減は安易にすべきでありません.他方,大学財政が逼迫しているので,全学的に大至急協議して,大学財政全体と部局の実情を勘案しつつ,これに関する最善の対処を短期的,長期的に計るための学部横断組織を迅速に立ち上げ,早期に問題解決を実現します.
 サ−ビス残業:残業に関する実態調査ならびに事務量の軽減と事務処理の効率化に関する現場等の提案を受けて,教職員が協力して,サ−ビス残業解消策の立案を早急に行います. 
 国大協:今後とも毎年削減されると予想される大学予算に対して,大学の果たす役割の重要性と大学財政基盤の強化を,国大協等を通じて広く社会・政府に訴え,大学の存立基盤強化につとめます.



 学長候補者 松田忠三氏のご回答
 
1. 法人化された千葉大学の現状認識ならびに今後の運営の基本理念について

 正直に申し上げますが、法人化後の現状について分析、検討することは、特にしておりませんでした。予算が減った、なぜこんな面倒な会計システムなんだというのが実感です。日本の社会構造の変化と共に大学予算は減らされていくものでしょうが、法人化に伴って生じる新たな無駄がもしあれば、そのようなものはなくすべきでしょう。会計システムは他に選択肢はなかったのか、またこれによりどれぐらいのメリットが出たのか、でなかったのか、今後のこともありますので、十分な検討がなされるべきです。
 現状論ではなく「べき論」としては次のように考えます。法人化とはその名の通り、国や文科省とは別の独自の法的人格を持った組織になったということであります。このような措置も結局は官の非効率・非能率を是正する目的でなされたものであり、その背後には官に対する国民一般の不信があったものと考えます。私はこの目的そのものはまったく正しいと思います。そうであればその目的に忠実に運営することです。国立大学に先立ち法人化した諸機関について様々な批判があることはご存じだと思います。その真偽を判断するほどの情報を私は持っておりませんが、運営にあたっては「民間の視点」ではなく民間人そのものを入れていくことが大切だと考えます。基本理念としては、この組織が財源の大半を公的資金に支えられた、学生、患者を始めとした国民一般に対するサービス機関であるとの認識を、すべての教職員が持ってそれぞれの任務にはげむこと、この一点につきます。他の諸命題はこれから自ずから導かれるものと考えます。
  
 
2. 千葉大学教職員の働く環境についての現状認識ならびに検討課題と今後の改善方向について
 
 自分の周辺のことしか分かりませんが、現状について特に大きな不満は感じていません。千葉大学にも色々な職場があるでしょうから、問題や不満がある場合にその解決に向けてユニオンの果たす役割も大きいように思います。是非がんばって頂きたい。なお働く環境と言えるのか分かりませんが、個人情報を取り扱う意識に遅れている点があるように思います。この点は改善すべきでしょう。
 

3. その他、特記事項について
 
 組織はある目的達成のためにあるものですが、時間と共に組織維持それ自体が自己目的になる危険性を持っています。民間の場合はいくつかの事例を見るまでもなく、非効率な組織、あるいは消費者の信頼を失った組織は、市場のテストに落第し縮小、解体、消滅していきます。しかし官にはそれがありません。国民全体の奉仕者であるはずの者が、自分の組織は便益がコストに見合わないから縮小する、あるいは廃止すると自ら言った試しはありません。国民の不信はその点にあります。市場の失敗に対しては厳正中立、公正な政府が介入し、それを是正し・・・という経済学の教科書に出てくるような官はどこにも存在しないことが明らかになってきました。このような不信感は強まりこそすれ弱まることはないでしょう。 
 法人化とは自らが独立した法的人格を持った意思決定主体になったということです。中央に対する批判のとばっちりを受けないよう、自らの主体的判断で効率的に法人を運営していくことこそが最も大切であると思います。
 

 学長候補者 守屋秀繁氏のご回答

 

1.法人化された千葉大学の現状認識ならびに今後の運営についての基本理念について

 

 本年4月より発足しました国立大学法人千葉大学は、法人化された一年目ということもあり、法人化への移行に伴うさまざまな課題をかかえております。千葉大学はキャンパスが西千葉、松戸、柏、亥鼻と別れており、各キャンパスにはそれぞれ種々の課題があります。これらの課題に対し、できることから実行に移すためには、教職員の方々から建設的なご意見をいただき、重要度や緊急度についても十分に議論していただき、これらに真摯に耳を傾けて、国の政策や千葉大学のおかれている立場も勘案し、「対話と協調」の精神で運営していくべきと考えております。
 大学の組織運営を円滑に機能させるためには、優秀な理事、学長補佐を決め、特定の業務を教職員と一体となり、横断的かつ機能的な支援チームを形成し、彼らに責任をもって対処していただくべきであります。
 「対話と協調」の基本理念に基づき、最終的にリベラルな総合判断を下すのが学長の責務と考えております。

 

2.千葉大学教職員の働く環境についての現状認識ならびに検討課題と今後の改善方向について

 

 現在、千葉大学は9学部、10研究科(大学院)12センター、1つの本館と2つの分館をあわせて3つの図書館のある大規模な総合大学であります。そのような施設で働く千葉大学教職員の労働環境にも、いくつかの課題があると認識しております。教職員の方々がよりよい環境で働けるよう、教職員の皆様のご意見をよくお聞きしながら、職場の環境改善に努力していきたいと思います。

 

3.教育・研究のhard面、およびsoft面での整備および財政

 大学の使命はいうまでもなく、教育・研究であります。財政的な面でも多くの問題がありますが、hardの面では老朽化した建物の改善や教育・研究上必要のある建物の建設に努力していきたいと考えております。softの面では、教員が学部学生に積極的に学習するように、大学院学生には果敢に自主的な研究に取り組むよう、指導するためにFaculty Developmentを充実させ、level upを図ることも重要であります。そして、学生には、専門領域の学習はもとより、学際的な総合的知識を身に付けさせ、外国語に堪能な国際的レベルの卒業生を輩出すべきと考えております。具体的には、交換留学や諸外国の大学との単位互換性制度を推進すると共に、千葉大学から発信できる特色ある人材育成と研究成果を生み出すために、全学が総力を挙げて取り組むことが必要です。
 財政的な面ですが、競争的大型研究資金の獲得や、種々の方策による外部資金の導入と共に、まず、教職員一人一人がかつての国立大学時代に何と無くもっていた甘えを払拭するような「意識改革」に基づき、環境マネージメントシステム (ISO14001)などを基盤とした経費節減を行うべきと考えております。
 今後は全教職員と学生が一体となり、職場環境の改善と千葉大学の発展のために「対話と協調」を実践して、各部局やセンターなどの機能を充実させることが肝要であると考えております。そうすれば、新生国立大学法人千葉大学は世界に冠たる大学になると信じております。